ヨーガの真髄、呼吸法について①
ヨーガ(ハタ・ヨーガ)の真髄は呼吸法にあります。
今回はハタ・ヨーガの呼吸法の中でも「完全呼吸法」と「クンバカ」を説明に出しながら呼吸法の重要性について、2回に分けてお伝えしていきます。
ご存じの方も多いかと思いますが、ヨーガには「完全呼吸法」と言う呼吸法がありますが、最初に非常に大事なことをお伝えします。
☆完全呼吸法は、ある程度源流のハタ・ヨーガのアーサナ(動くこと)で体を作ってからでないと全く意味がないと言うことを知っておいてください。
ヨーガにおける呼吸法の重要性と呼吸にはトレーニングが必要、のお話
動くこと(アーサナ)も筋肉の形成や骨格矯正、血流の増進などの重要な役割をしていますが、私たち人間が生命維持をしていく上で最も必要で真っ先に体へ取り入れるのが「酸素」です。酸素を体に取り入れなければ、私たちの心臓や肺をはじめとする臓器や脳は動きませんし、細胞分裂も、そして体も動かすことができません。だから呼吸というのがとてつもなく重要なのですが、日々当たり前に四六時中行っている呼吸も、実はトレーニングしなければ最大限に呼吸の能力を活かして生きていくことができないのです。おそらく現代人のほとんどが、自分の持っている呼吸力の半分以下でしか呼吸ができていないでしょう。これが現代人の肉体だけでなく精神疾患などの病気が多い原因の一つでもあります。
ではなぜ、呼吸はトレーニングしなければ最大限の能力を発揮できないのでしょうか。
そのポイントは、呼吸の種類の中でも「腹式呼吸」にあります。
私たちは普段、次の3つの呼吸法を身体が無意識に使い分けて生命を維持しています。
・胸式呼吸
・鎖骨式呼吸
・腹式呼吸
の3種類です。
ヨーガの完全呼吸法というのは、この3つの呼吸法を繋げて連続して繰り返し行う呼吸法です。
どれが一番大事と言うことはなく、どれも重要であり、どの呼吸法も身体が無意識に使いこなして呼吸できなければなりません。
(余談ですが、例えば何か自分にとってショッキングな事象が起きたときに、この呼吸法のどれもが咄嗟にできない状態がパニック障害です。鬱などの精神疾患も、心の問題以前に安定した「呼吸ができていない」ことは脳にも肉体にも酸素が十分に巡らないので負のループにハマる大きな要因でしょう。源流のハタ・ヨーガで動きながら呼吸法も反復していけば、必ず身体が良いループに転じる時が来るので、ぜひ多くの方に始めていただきたいと思います。)
私たち人間は、5分呼吸しなければ脳が破壊されます。10分呼吸しなければ死にます。だから、何かあったら体は胸式呼吸・鎖骨式呼吸・腹式呼吸を総動員させて絶対に呼吸するようにできています。
如何なる時も、私たちの身体はどれかの呼吸を使い分けて生命維持するようできているのですが、現代人のほとんどが特に使えていない呼吸があります。
それが「腹式呼吸」です。先にお伝えした通り、呼吸の能力を最大限に発揮するためのポイントも「腹式呼吸」です。
腹式呼吸の真実
腹式呼吸とは、口は使わず鼻のみで呼吸し、お腹を膨らませたり凹ませたりする呼吸法のことです。
実は息を「吐く」という行為は腹式呼吸でしかできません。正確には体の中の空気(二酸化炭素)を出し切ることは、座った座位の状態で、かつ腹式呼吸で吐くことでしか出しきれません。
その理由は、体の中に取り入れた酸素を二酸化炭素として排出する時「腹直筋」を使わないと全て出し切ることができないから。(腹直筋を使う呼吸法は腹式呼吸だけです。)
十分に息を吐き切ることができないと、体はガス交換がしっかりとできないため、体内の酸素が不足し、二酸化炭素が蓄積します。そうなると細胞がいつも酸欠状態になり、疲労感や倦怠感、集中力や免疫力の低下、代謝や血流の低下、冷え、精神疾患などに陥る可能性が高まります。大きな病気などに繋がり命に関わるケースもあります。
腹直筋というのは、人体の中でも年齢と共に1番に匹敵するくらい早く落ちてしまう筋肉。かつ、鍛えたいと思った時には腹直筋だけでなく腹直筋の周りにある腹横筋や外腹斜筋、内腹斜筋といった腹筋群を始め、多裂筋や横隔膜、骨盤底筋といったインナーマッスルを一緒にトレーニングして鍛えないと腹直筋の能力を上げたり維持することはできない非常に奥深い筋肉なのです。腹直筋が弱いと吐息が十分できないため、腹式呼吸がほとんどできない身体になります。
だから、巷に溢れるフィットネスやスポーツでは呼吸力を上げるどころか、腹式呼吸のできる身体づくりというのはほぼできず、運動をしている割には病気になる人が多い世の中なのだと言えます。
(腹直筋を使って息を吐き切ること、腹横筋や内腹斜筋、多裂筋や横隔膜、骨盤底筋などのインナーマッスルは人体の構造上、座位の状態でしか鍛えられません)
源流のハタ・ヨーガが、常に腹式呼吸で、且つほぼ座位の状態でアーサナを繰り返す意味の一つは「呼吸の能力が高い身体づくり」が目的だからです。
源流のハタ・ヨーガには一切の無駄がありません。
次回は「止息なくしてヨーガとは言わず」
というほど、ヨーガの(アーサナ)動きに必ず入る「クンバカ(止息)」についてもお伝えしながら、引き続き呼吸について書いていきたいと思います。

