病気は治るべきもの、治すべきものではない

 

今回は、伝統的はハタヨーガの視点や発想から「身体の治し方」について書いていきます。

 

私たち現代人の多くは、病気になると病気を治そうと病院へ足を運び、薬を飲み、そして身体を休めます。

「病院に行けば、薬を飲めば、医者や薬が治してくれる!」という思いが多くの人々の心の中にあるように思います。

 

本来、人間の身体を治しているのは他でもなく「自分自身」です。

私たちの身体内につちかわれた力、自然治癒力です。

自然治癒力と聞くとフワッとしておりイメージが湧きづらいかもしれませんが、自然治癒力とは、筋肉や神経、意識や内分泌諸々の複雑で微妙な動的調和の上に成立する体の自己維持のはたらきのことを言います。

何かの拍子にこの動的調和が破れると、調和を回復しようと全身的な反動が起こります。

これが「病気」と言われるものです。

 

伝統的なハタヨーガの発想は「病気が治れば健康になる」というものではありません。

病気を治すために呼吸やポーズを実践するのではなく「健康になれば、病気は自然と治る」という発想です。

それは、ヨーガというものが自然治癒力を強めるための手段であるからです。

 

レッスンにご参加頂いている皆さまには、日頃から呼吸に合わせて一回のレッスンの中で沢山のアーサナ(ポーズ)を実践して頂いております。

なぜ多くのアーサナを、そして多様な形のアーサナを実践する必要があるのでしょうか?

それは、自然治癒力と呼ばれる筋肉や神経、意識や内分泌、その他諸要素の複雑で微妙な部分へ隈なくアプローチをかけて崩れた動的調和を戻していくためには、それだけ多くの動きや数を実践する必要があるのです。

 

伝統的なハタ・ヨーガは人間の治す力を、肉体が再生しようとする力を後押しするための他に類を見ないツールです。

私たち人間の心と体は、常に前を向いています。

肉体の持ち主である本人がどう思っていようが、「良くなろう、良くなろう」と常に身体は健気に前を向いています。

 

現代の大きな問題の一つに、病人の増加があげられます。

コロナウィルスに限らず、体も心も大きくバランスを崩している方が驚くほど多い世の中です。

ご自身の身体を信じ、ご自身の自然治癒力を強めるハタ・ヨーガを日常で実践し続けてくださる方が増え、健康な人々が増えれば医療現場の負担も社会不安も減ると私は思っています。

不幸の大元は多くの場合、病気です。

健康は幸福の基であり不幸の防波堤。

 

心身の幸福を、ぜひ伝統的なハタヨーガで手に入れましょう。